ポイント
- 脳と膵臓(すいぞう)をつなぐ自律神経を個別に刺激する方法を独自に開発し、これにより、マウスにおいてインスリンを作る細胞を増やせることを発見した。
- インスリン産生細胞が減ってしまった糖尿病マウスの自律神経を刺激することで、インスリン産生細胞を再生し治療することに成功した。
- 自律神経刺激によってインスリン産生細胞を増やす糖尿病治療法・予防法の開発や、インスリンを作る細胞の数や働きを調節するメカニズムの解明が進むことが期待される。
多くの糖尿病は、血糖値を下げるホルモン(インスリン)を産生する唯一の細胞である膵臓のβ細胞が減少することで血糖値が上昇し発症します。このβ細胞を体内で増やす治療法が世界中で求められていますが、現在のところ開発されていません。
東北大学 大学院医学系研究科 糖尿病代謝内科学分野および東北大学病院 糖尿病代謝科の今井 淳太 准教授、川名 洋平 助教、片桐 秀樹 教授らのグループは、マウスにおいて、脳と膵臓をつなぐ自律神経の一種である迷走神経(膵臓迷走神経)を刺激することで、体の中でβ細胞を増やすことが可能であることを世界で初めて発見しました。本研究ではオプトジェネティクスという手法を用い、光によって膵臓迷走神経を刺激する方法を開発しました。さらに、インスリンが減って糖尿病を発症しているマウスの膵臓迷走神経をこの方法を用いて刺激することで、β細胞を再生し、マウス糖尿病を治療することにも成功しました。この成果により、膵臓迷走神経刺激によってβ細胞を増やすという糖尿病の根本的な予防・治療法の開発につながることが大いに期待されます。また、β細胞の数や働きを調節する仕組みや糖尿病発症のメカニズムの解明も進むものと考えられます。
本研究成果は、2023年11月9日(ロンドン時間)に「Nature Biomedical Engineering」誌に掲載されます。
本研究は、「文部科学省 科学研究費補助金(課題番号:20H05694、22H0312421)」、「科学技術振興機構(JST) ムーンショット型研究開発事業(課題番号:JPMJMS2023)」、日本医療研究開発機構(AMED) 革新的先端研究開発支援事業(PRIME)「生体組織の適応・修復機構の時空間的解析による生命現象の理解と医療技術シーズの創出」研究開発領域における研究開発課題「組織の適応・修復のための神経シグナルを介した細胞増殖制御機構の解明(研究開発代表者:今井 淳太、課題番号:21gm6210002h0004)」の支援を受けて行われました。
<プレスリリース資料>
- 本文 PDF(723KB)
<論文タイトル>
- “Optogenetic stimulation of vagal nerves for enhanced glucose-stimulated insulin secretion and β cell proliferation”
- DOI:
<お問い合わせ先>
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<研究に関すること>
今井 淳太(イマイ ジュンタ)
東北大学 大学院医学系研究科 糖尿病代謝内科学分野 准教授
Tel:022-717-7611
E-mail:imaimed.tohoku.ac.jp
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<JST事業に関すること>
犬飼 孔(イヌカイ コウ)
科学技術振興機構 ムーンショット型研究開発事業部
〒102-0076 東京都千代田区五番町7 K’s五番町
Tel:03-5214-8419 Fax:03-5214-8427
E-mail:moonshot-infojst.polarismoves.com
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<報道担当>
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