ポイント
- 超解像赤外分光イメージングにより、藍(らん)藻バイオフィルムの構成成分を非標識で可視化した。
- バイオフィルムを主に構成する硫酸多糖成分に沿って藍藻が配列している様子を世界で初めて明らかにした。
- 硫酸多糖だけでなく、他の多糖成分やたんぱく質も共在し、バイオフィルムを構成していることを示唆した。
徳島大学 ポストLEDフォトニクス研究所の加藤 遼 特任助教、矢野 隆章 教授、東京工業大学 科学技術創成研究院 化学生命科学研究所の前田 海成 助教、田中 寛 教授および理化学研究所 光量子工学研究センター フォトン操作機能研究チームの田中 拓男 チームリーダー(同 開拓研究本部 田中メタマテリアル研究室 主任研究員)らの研究グループは、超解像赤外分光イメージング技術を用いて、光合成微生物が形成する細胞の集合体(バイオフィルム)の分子成分を非標識かつ高解像度で可視化することに成功しました。
光合成を行うバクテリアである藍藻(シアノバクテリア)は、さまざまな環境でバイオフィルムを形成します。藍藻バイオフィルムは藍藻自身の生存だけでなく、他の微生物のすみかや栄養源としても活用されている重要な存在です。藍藻バイオフィルムは多糖を主要構成要素としつつも、たんぱく質などの他の分子も共在しており、それらの分子の分布を観察することは、バイオフィルムの機能や形成機構の解明につながります。
しかし、これまでのイメージング技術では、分子を標識した際にバイオフィルムの構造に影響を与えるといった課題がありました。そこで研究グループは、非標識で試料の構成分子を分析できる超解像赤外分光イメージング技術を利用することで、バイオフィルム中に含まれる硫酸多糖成分や藍藻細胞などを可視化することに成功しました。これにより、バイオフィルム内で硫酸多糖成分に沿って藍藻が配列している様子や、たんぱく質と多糖成分が共在している様子が明らかになりました。
本手法により、光合成微生物バイオフィルムの形成メカニズムや機能に関する新たな知見が得られるだけでなく、他の微生物バイオフィルムにおいてもその構造と組成の理解が進むことが期待されます。
なお、本研究成果は、2023年11月10日(金)(日本時間)公開の「Analyst」誌に掲載される予定です。
本研究は、科学技術振興機構(JST)の戦略的創造研究推進事業 ACT-X「環境とバイオテクノロジー」(研究代表者:加藤 遼、JPMJAX21B4/前田 海成、JPMJAX20BG)、CREST(研究代表者:田中 拓男、JPMJCR1904)、創発的研究支援事業(研究代表者:矢野 隆章、JPMJFR202I)および科学研究費助成事業「学術変革A公募研究(研究代表者:加藤 遼、JP23H04139)」の支援を一部受けて実施されました。
<プレスリリース資料>
- 本文 PDF(562KB)
<論文タイトル>
- “Label-Free Visualization of Photosynthetic Microbial Biofilms using Mid-Infrared Photothermal and Autofluorescence Imaging”
<お問い合わせ先>
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<研究に関すること>
加藤 遼(カトウ リョウ)
徳島大学 ポストLEDフォトニクス研究所 特任助教
〒770-8506 徳島県徳島市南常三島町2丁目1番地
Tel:088-656-8026
E-mail:kato.ryotokushima-u.ac.jp
前田 海成(マエダ カイセイ)
東京工業大学 科学技術創成研究院 化学生命科学研究所 助教
〒226-8503 横浜市緑区長津田町4259
Tel:045-924-5856
E-mail:kmaedares.titech.ac.jp
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<JST事業に関すること>
宇佐見 健(ウサミ タケシ)
科学技術振興機構 戦略研究推進部 先進融合研究グループ
〒102-0076 東京都千代田区五番町7 K’s五番町
Tel:03-6380-9130 Fax:03-3222-2066
E-mail:act-xjst.polarismoves.com
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<報道担当>
徳島大学 ポストLEDフォトニクス研究所 事務室
〒770- 8506 徳島県徳島市南常三島町2丁目1番地
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